
メルマガのクリック率を改善しようとするとき、多くの現場ではボタンの色や文言から手をつけます。しかし実際に効くのは、その手前にある「どこに、どういう文脈で置くか」です。
この記事では、まずCTRとCTORという2つのクリック指標の違いを整理し、そのうえでCTAの配置とリンク設計の実務、クリックされない典型パターンを解説します。
結論から言えば、クリック率を上げるためにボタンを増やすのは有効ではありません。読者がクリックするのは、その時点で「押す理由」が本文から伝わっているときだけです。
クリックは、開封と違って読者の明確な意思による行動です。誤ってクリックされることはあっても、機械的に発生することはありません。この点で、クリック率は開封率よりも成果指標として信頼できます。
そのうえで改善に取り組む順序は、①指標を正しく分ける、②CTAの置き場所を設計する、③クリックを妨げている要因を取り除く、の3段階になります。
クリックに関する指標は2つあり、分母が異なります。混同すると改善の方向を誤ります。
| 指標 | 計算式 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| CTR (クリック率) |
クリック数 ÷ 配信成功数 | 配信全体としての成果。件名と本文の両方の影響を含む |
| CTOR (クリック開封率) |
クリック数 ÷ 開封数 | 開封した読者のうち何割が行動したか。本文とCTAの評価 |
CTRは分母が配信数なので、件名が悪くて開封されなければ下がります。つまりCTRには件名の良し悪しが混ざっています。
一方CTORは、開封した人だけを分母にします。件名の影響を除外できるため、本文とCTAが読者を行動させられたかを純粋に評価できます。本文の改善に取り組むなら、見るべきはCTORです。
CTORの分母は開封数です。開封の計測はApple Mail Privacy Protectionなどの影響を受けるため、分母が実態より膨らむとCTORは実際より低く算出されます。
数値が下がったように見えても、本文が悪化したとは限りません。開封の計測環境が変わった可能性があります。この点を踏まえると、外部要因の影響を受けにくいCTRを主指標に置き、CTORは本文の改善を検証する際の補助として使うのが現実的です。
開封率そのものの計測の限界については、別途詳しく解説する予定です。
もう一点、比較の際に見落とされやすい点があります。クリック数を「延べクリック数」で数えるか、「クリックした人数(ユニーク)」で数えるかは、配信システムによって異なります。
同じリストに同じメールを送っても、定義が違えば数値は変わります。他社の数値や業界平均と比べる際は、算出方法が同じかを確認してください。
参考値として、海外の大規模調査の数値を挙げます。
| 指標 | 数値 | 種別 |
|---|---|---|
| クリック率(CTR) | 2.09% | 平均値 |
| クリック開封率(CTOR) | 6.81% | 中央値 |
出典:MailerLite「Email marketing benchmarks across all industries」(集計期間 2024年12月〜2025年11月、360万件超のキャンペーン・181,000超のアカウント、2026年9月5日参照)
https://www.mailerlite.com/blog/compare-your-email-performance-metrics-industry-benchmarks
ただし、この数値を自社の目標にそのまま置くことは推奨しません。海外の配信サービスの集計であり、日本国内のBtoB配信とは読者層もリストの性質も異なります。また前述のとおり、クリックの定義自体が配信システムによって異なります。
目安として持ちつつ、実際の判断は自社の過去の数値との比較で行ってください。同じリスト・同じ配信システムであれば、条件が揃うため変化を正しく読み取れます。
クリック率に最も影響するのは、CTAをどこに置くかです。
よくある配置は、本文の最後にCTAを1つ置く形です。これは読み切った読者には有効ですが、途中で離脱した読者には届きません。
効果的なのは、読者がその行動を取りたくなった直後に置くことです。たとえば課題を提示し、解決策を説明した直後がその位置にあたります。本文の構造とCTAの位置を対応させると、自然な流れでクリックにつながります。
1通のメールに複数のリンクを入れると、クリックは分散します。合計のクリック数は増えることがありますが、本当に見てほしいページへの到達は減ります。
1通1メッセージを原則とし、主となるリンクを決めます。補足的なリンクを置く場合も、主リンクと視覚的な強さに差をつけます。
CTAボタンを画像で作ると、画像がブロックされる環境ではボタンごと消えます。読者からはクリックする場所が見えなくなり、その配信のクリックはほぼ発生しません。
ボタンは、背景色を指定したセルの中にテキストリンクを置く形で実装します。この方法なら画像がブロックされても、色と文字が残ります。実装の詳細はHTMLメールのコーディングの領域になりますが、「画像で作らない」という原則だけは押さえておく必要があります。
ボタンに加えて、その前後にテキストリンクを置くと、クリックできる面積が増えます。特にスマートフォンでは、ボタンが小さいとタップしづらいことがあります。
クリック率が低い場合、次のいずれかに該当していることが多く見られます。
「詳しくはこちら」だけのリンクは、リンク先で何が得られるかが伝わりません。クリックの前に、読者は「押したらどうなるか」を知る必要があります。リンクの文言か、その直前の一文で、遷移先の内容を示します。
冒頭にいきなりCTAを置くと、読者はまだ判断材料を持っていません。本文を読んで納得する前にボタンがあっても、押す理由がありません。
メール本文で説明した内容と、リンク先のページの内容がずれていると、次回以降のクリックが減ります。一度期待を裏切られた読者は、同じ送信者のリンクを警戒するようになります。
見落とされやすいのがこれです。送信側の環境では正常に見えていても、読者の受信環境ではレイアウトが崩れている場合があります。ボタンが画面外にはみ出す、背景色が反映されず文字が読めない、といった状態です。
クリック率が説明のつかない低さで推移している場合、本文やCTAの問題ではなく、そもそも表示されていない可能性を疑ってください。
CTAの配置と文言を整えたうえで、次に効くのがレイアウトです。
クリックは、読者が本文を読み進めた先で発生します。したがって、本文が読み進められる状態になっているかがクリック率の前提になります。文字が詰まっていて読みにくい、情報量が多くて主旨が分からない、といった状態では、CTAに到達する前に離脱します。
特にスマートフォンでの閲覧が多い場合、PCで作成したレイアウトがそのまま適用されると、文字が小さくなったり、横幅が画面に収まらなかったりします。読者の受信環境で読める状態になっているかを確認してください。
メルマガのデザイン設計については、別途詳しく解説する予定です。
海外の調査では、MailerLiteが360万件超のキャンペーンを集計した結果としてクリック率2.09%(平均値)、クリック開封率6.81%(中央値)を公表しています。ただし配信システムによってクリックの数え方(延べ数かユニーク数か)が異なるため、自社の数値と比較する際は算出方法の確認が必要です。日本国内のBtoBに限定した最新の業種別クリック率については、確かな出典を確認できませんでした。
配信全体の成果を見るならCTR、本文とCTAの改善効果を見るならCTORです。CTRは分母が配信数のため件名の影響を含みます。CTORは開封者のみを分母とするため本文の評価に適していますが、開封数の計測が外部環境の影響を受けるため、分母が膨らむと実際より低く出ます。主指標はCTR、本文改善の検証にCTORという使い分けが現実的です。
主となるCTAは1つに絞ることをおすすめします。複数のリンクを置くとクリックが分散し、本当に見てほしいページへの到達が減ります。ただし同じリンク先へのボタンを本文の途中と末尾に置くことは、読者の離脱位置に対応できるため有効です。
まず表示の崩れを疑ってください。メールソフトの仕様変更などにより、これまで正常に表示されていたレイアウトが崩れ、ボタンが見えなくなっている場合があります。あわせて、配信システムの計測方法が変わっていないか、リンク先のページが正常に表示されるかを確認します。本文やCTAの文言を見直すのは、これらを確認した後です。
画像の表示をブロックしている受信環境では、ボタンそのものが表示されなくなるためです。読者からはクリックする場所が見えなくなります。背景色を指定した領域にテキストリンクを置く形で実装すれば、画像がブロックされてもボタンとして機能します。
クリック率の改善は、ボタンの見た目より先に、指標の分け方と配置の設計から始まります。
特に4つ目の「表示崩れ」は、本文をいくら改善しても解決しません。受信環境によってボタンが見えていない場合、クリックは構造的に発生しないためです。
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