
「テキストメールのほうが開封率が高い」「HTMLメールは迷惑メールになりやすい」。メール配信の現場では、こうした説が語られることがあります。
この記事では、こうした説にどこまで確かな根拠があるのかを、出典を確認しながら整理します。結論を先に述べると、形式によって最も明確に変わるのは成果そのものではなく、計測できる範囲です。
結論として、HTML形式とテキスト形式の間で確実に違うと言えるのは、計測できる指標の範囲です。
開封率やクリック率がどちらの形式で高くなるかについては、条件を揃えた最近の大規模な比較データが乏しく、断定できる状況にありません。一方、計測可能な範囲の違いは仕組みから明確に説明できます。
したがって形式を選ぶ際は、「どちらが成果が出るか」ではなく、「何を測りたいか」「読者の環境で正しく表示できるか」から判断するのが現実的です。
| 指標 | HTML形式 | テキスト形式 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 到達・不達 | 計測できる | 計測できる | 配信システム側で判定するため形式に依存しない |
| 開封 | 計測できる | 計測できない | 本文に埋め込んだ画像の読み込みで判定するため |
| クリック | 計測できる | 計測できる | リンクを計測用URLに置き換える方式のため |
| 配信停止 | 計測できる | 計測できる | — |
テキスト形式を選ぶと、開封率が取得できなくなります。ここで判断が必要になるのは、開封率が自社の運用に必要かどうかです。
開封率は件名の効果を検証する際に使われますが、成果の判断そのものにはクリック率のほうが適します。件名のA/Bテストを行わないのであれば、開封率がなくても運用は成立します。
なお開封の計測方法には精度の限界があり、実際の閲覧回数とは一致しません。この点については、別途詳しく解説する予定です。
この説について、確認できる範囲を整理します。
まず構造的な問題があります。前述のとおり、テキスト形式では開封を計測できません。
したがって「テキスト形式の開封率」という数値自体が、通常の方法では取得できません。比較データとして示されているものがある場合、どのように計測したのかを確認する必要があります。
クリック率については比較が可能です。海外では、プレーンテキスト形式のほうがクリック開封率が高かったとするA/Bテストの結果が公開されています。
ただし今回調査した範囲では、これらのデータは実施年やテストの母数が明示されていないものが多く、2026年時点の判断材料として引用するには根拠が不十分でした。
また日本国内において、HTML形式とテキスト形式の成果を統制して比較した大規模な調査データは、確認できませんでした。日本のビジネスメールの慣習は海外と異なるため、海外のデータをそのまま当てはめることもできません。
確かな根拠をもって言えるのは、次の点にとどまります。
したがって「テキストのほうが成果が出る」と決めつけて形式を選ぶことは推奨しません。自社のリストで検証するのが唯一の確実な方法です。
次に到達率の説です。
迷惑メール判定の仕組みについて、主要な配信サービスが公開している解説を確認すると、到達率に影響する要因として挙げられているのは次のような項目です。
「HTML形式であること」を単独の要因として挙げているものは、今回の調査では確認できませんでした。またHTML形式が到達率を何%下げるという定量的なデータも見つかりませんでした。
形式そのものではなく、HTMLメールの作り方によってリスクが変わる点はあります。
特に、本文がほぼ画像だけで構成され、テキストがごくわずかしかないメールは注意が必要です。この構成は、文面によるフィルタを回避する手法として使われることがあるため、判定に影響する可能性があります。
画像を使う場合も、本文のテキストで内容が伝わる状態にしておくことが推奨されます。これは画像がブロックされる環境への対策としても有効です。
到達率を維持するために効果が高いのは、形式の選択ではなく次の項目です。
特に2番目は重要です。配信停止したい読者が停止できないと、迷惑メールとして報告されます。迷惑メール報告は送信元の評価を直接下げるため、他の読者にも届かなくなる可能性があります。
根拠のない説を除いたうえで、HTML形式が実際に不利になる場面を挙げます。
最も実務的な問題がこれです。メールクライアントによってHTMLとCSSの解釈が異なるため、送信側の環境で正常に見えていても、読者の環境で崩れていることがあります。
崩れた状態では、レイアウトによる情報の整理もCTAの視認性も失われます。確認の体制がないままHTML形式を使うと、テキスト形式より読みにくい結果になることがあります。
受信環境の設定によっては、画像が自動的に表示されません。画像に依存した構成では、この状態で内容が伝わらなくなります。
対策として、画像には代替テキストを設定し、画像がなくても意味が通る構成にします。
HTMLメールはテキスト形式より容量が大きくなります。特に画像を多く含む場合、受信環境によっては本文が途中で切られることがあります。
商談中の担当者への連絡など、個別のやり取りとして送るメールでは、装飾されたHTML形式は不自然に見えます。この用途ではテキスト形式が適します。
両形式の利点を組み合わせる方法として、1通のメールにHTML版とテキスト版の両方を格納するマルチパート配信があります。
どちらを表示するかは受信側が判断します。HTML形式を表示しない設定の読者には、テキスト版が表示されます。送信側で読者ごとに送り分ける必要はありません。
注意点として、テキスト版の品質があります。HTMLから自動生成すると、レイアウトが失われた読みにくい文章になることがあります。リンクがURLの羅列として並ぶこともあります。
テキスト版を受け取る読者にとっては、それがそのメールのすべてです。自動生成に任せず、内容が伝わる形に整えてください。
なお、マルチパート配信を行った場合に到達率が何%向上するかという定量的な統計は、今回の調査では確認できませんでした。実装として一般的であり推奨もされていますが、効果を数値で示す根拠は示せません。
最終的な判断は、次の順序で行います。
この4点で判断がつかない場合は、自社のリストで実際に比較するのが確実です。同じ内容を形式だけ変えて配信し、クリック率を比較します。他社の事例や一般論より、自社の読者の反応が正確な判断材料になります。
なお用語の整理と使い分けについては、別途詳しく解説する予定です。
比較できる確かなデータは確認できませんでした。構造的な理由として、テキスト形式では開封を計測できません。開封の計測は本文に埋め込んだ画像の読み込みで判定する仕組みのため、画像を埋め込めないテキスト形式では取得できないためです。したがって「テキスト形式の開封率」という数値自体が通常の方法では取得できず、比較が成立しません。
HTML形式であること自体を要因として挙げている根拠は、今回の調査では確認できませんでした。主要な配信サービスが挙げている到達率の要因は、送信元の評価、迷惑メール報告の履歴、無効なアドレスへの配信、本文の内容、リストの管理状態などです。ただし本文がほぼ画像だけで構成されテキストがごくわずかというメールは、判定に影響する可能性があります。
形式の変更で到達率が改善するという確かな根拠は確認できませんでした。到達率を維持するために効果が高いのは、恒久的な不達となったアドレスをリストから除外すること、配信停止の導線を分かりやすく設置すること、同意を得た相手にのみ配信することです。特に配信停止が分かりにくいと迷惑メール報告につながり、送信元の評価を直接下げます。
表示確認の体制がない場合が最も実務的な問題です。メールクライアントによって解釈が異なるため、送信側で正常に見えても読者の環境で崩れていることがあり、その状態ではテキスト形式より読みにくくなることがあります。ほかに、画像がブロックされる環境、データ容量が大きくなる点、1対1の連絡として送る場合が挙げられます。
到達率が何%向上するかという定量的な統計は確認できませんでした。実装として一般的であり推奨もされていますが、効果を数値で示す根拠は示せません。ただしHTML形式を表示しない設定の読者にもテキスト版で内容が届くという利点は確実にあります。なおテキスト版を自動生成に任せると読みにくい文章になることがあるため、内容が伝わる形に整えてください。
HTML形式とテキスト形式の比較について、確認できたことをまとめます。
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